academist、リリースから1年が経ちました。
学術系クラウドファンディング(CF)サイト「academist(アカデミスト)」のリリースから、今日で1年が経ちました。
良い機会なので、アカデミストのこれまでの実績と運営する中で気付いたことを簡単にまとめていきたいと思います。
13名の研究者で、支援総額1000万円を達成!
当初は1年後まで存続できているイメージをなかなか持てていませんでしたが、1年間で13名もの研究者に挑戦していただき、支援総額1000万円強に到達しました。(※未達成のプロジェクトも含まれているため、研究者に配分された研究費の総額ではありません。)
数ある国内CFサイトの中で比較するとアカデミストの規模は小さいのですが、学術系に限定すると国内外を含めてもトップ10に入ります。チャレンジャーが限定されているため、かなり小さなマーケットであると言えます。
【参考】国内外学術系CFサイト(プロジェクト数)ランキング
第1位:Experiment(250個以上)
第2位:Pozible(60個程度)
第3位:science starter(60個程度)
第4位:YuStart(35個程度)
第5位:PETRIDISH(20個程度)
第X位:academist(13個)
(注)第2位のPozibleは学術系特化型ではありませんが、Researchカテゴリが大変充実しているので特別に記載しています。
アカデミストが使われない3つの理由
リリース当初は、チャレンジしようとする研究者は全く現れませんでした(今でもほとんどいませんが…)。これまでのチャレンジャー13名は、こちらから挑戦依頼を行い引き受けていただいた方がほとんどです。
また、リリース時は学術系CFのニーズがあるかどうかよくわからないサービスでした(今でも諸々わからない点はありますが…)ので、サイト運営と並行して約150名の研究者にアカデミストのニーズ等について伺うインタビュー(対面、スカイプ、メール等)を行いました。
研究分野により特徴的な回答もあったものの、共通する部分をザックリまとめると「おもしろそう!でも私は…」という意見が多く、プロジェクトのリリースには辿り着かない場合がほとんどでした。
その理由としては、
第1位:費用対効果が悪いこと
プロジェクト作成に費やす時間や獲得可能な金額(数十万円〜百万円程度)、失敗のリスクを考えると、その時間を研究を費やしたいという意見が多くありました。
第2位:教授の賛同を得られないこと(主にポスドク、大学院生)
アカデミストにチャレンジしよう!と決断したのに、教授から「そんなことをする時間があれば研究を進めなさい!」という正論(?)を言われて断念せざるを得ないことも何件かありました。
第3位:事務側の賛同を得られないこと(大学院生は除く)
アカデミストにチャレンジしよう!教授の賛同も得られた!にも関わらず、事務から「前例がないためクラウドファンディングが一般的になるまでは対応できません」と言われて断念することもありました。「一般的なサービスにするためには前例をたくさん作る必要があるのですが、一般的なサービスでない限り前例を作ることができない」というミレニアム問題です…。
アカデミストが使われる3つの理由
それでは、アカデミストにチャレンジする理由はどのようなところにあるのでしょうか。
第1位:研究費を募れること
数十万円で論文になる研究テーマを扱う研究者からすると、研究費を募れること自体がメリットになります。また、メインとなる研究費を十分に持つ研究者でも、その利用用途が限定的である場合が多々あります。アカデミスト研究費は利用用途を指定しないため、メインの研究費と並行して利用できることもひとつのメリットです。
第2位:研究内容を広められること
研究分野の魅力や概要を「クラウドファンディングに挑戦しています!」という形で発信するため、研究室や個人サイトと比べるとアクセス数は多くなり、結果的に研究分野に関する認知度が高まります。近年、サイエンスカフェをはじめとしたアウトリーチ活動の必要性が文科省界隈で議論されていますが、アカデミストのチャレンジそのものがオンライン版のアウトリーチ活動となります。
第3位:支援者からのメッセージが届くこと
チャレンジャーの方々から、支援の際の「応援メッセージ」をもらえることが嬉しいという感想をよくいただきます。アカデミスト第一弾プロジェクトで実際にチャレンジしていただいたテヅルモヅル博士・岡西さんは「これだけたくさんの方がテヅルモヅルに興味を持っていることを知り驚いた」と仰っていました。
インタビュー動画もありますので、ぜひご覧ください。
魅力的な研究者が集うプラットフォームを目指して
アカデミストの1年目の成果と学術系CFに関する知見を超圧縮してまとめてみました。実際にサービスを動かして具体的事例を積み重ねることで、アカデミストの強みや弱み、今後の方向性が浮き彫りになり、またサービス自体の着地点も何となく見えてきたため、2年目も愚直に開発を続けていきたい所存です。
最後になりましたが、アカデミストは実にさまざまな方々のご協力・ご助言に支えられて2年目を迎えることが出来ています。研究者の皆様をはじめ、大学や民間企業、メディア関係者の皆様、そして数少ない貴重な友人・先輩・後輩からのアドバイスを反映させながら、より良いサービスになるよう努めますので、引き続き、宜しくお願いいたします。