中高一貫教育に全寮制は必要か?
全寮制の中学・高等学校
先日、海陽学園に関するニュース記事を読みました。『海陽学園は日本で一番学費の高い中高一貫校と言われていますが、その理由は「全寮制」を採用しているためです』という内容です。
記事内容とは直接関係はありませんが、良い機会ですので中学・高等学校が全寮制を採用する意義について考えていきたいと思います。
公立高校との比較
まず、全寮制である海陽学園と一般的な公立高校を比べてみます。
海陽学園 | 公立高校 | |
授業時間 | 40コマ/週 | 34コマ/週 |
部活動 | 全員加入 | 任意加入 |
ゲーム | 禁止(※1) | 学外では自由 |
漫画 | 禁止(※1) | 学外では自由 |
携帯電話 | 禁止(※2) | 学外では自由 |
食事 | クラスメイト | 家族、友達等 |
休日の過ごし方 | 校内イベントが多い | 自由 |
異性との交流 | 困難 | 自由 |
(※1)記事によると、ゲームや漫画は「寮内では」禁止と記載されていましたが、学内で許容されているとは考えにくいためゲーム・漫画は一切利用できない環境ではないかと考えられます。
(※2)携帯電話は学内・寮内ともに使用禁止で、学校が管理しているとのことです。
以上の表だけでも、海陽学園では学習時間こそ充分に確保されているものの公立高校と比べると遊べる時間や行動範囲に大きな差があることがわかります。
娯楽の時間を捨ててまで全寮制の中学・高等学校に通うメリットはどのような点にあるのでしょうか。
全寮制で「規則の中で他者と折り合いを付ける力」を養成する
海陽学園の中島校長曰く、現在の学生に足りていない能力は「人間力」であるとのことです。ここでの人間力とは、「規則の中で他者と折り合いを付ける力」を意味しています。人間力を養成するためには規則に従い集団生活を営むことが必要であるという信念のもと、海陽学園では全寮制を採用しているとのことです。
たしかに、社会では様々な規則に従わなければならないことが多く、また、気の合わない人と仕事をする機会も少なくありません。社会で人間関係を良好に築くためにも、中高生時代から寮の規則やクラスメイトと折り合いを付ける経験を積み、自己主張をしない許容範囲の広い人間を育てる意義はあるのではないかと思います。
しかし、そのような環境では、自分の頭で物事を考えて行動できる次世代のリーダーは育ちません。
なぜなら、規則を与えることで中高生が思考停止をしてしまうためです。規則に縛られた環境から、既存の価値観に縛られずに物事を多角的に捉えられる次世代のリーダーを生み出せるとは到底思えません。
ゲームや漫画などをはじめから規制するよりも、これらの利用を認めた上で、成績や生活態度が芳しくない中高生に適切な規制を作るほうが教育的であるように思います。中高生と学校側がトコトン話してお互い納得する規制を作るプロセスにより、他者と折り合いを付ける力が育成されるのではないでしょうか。
まずは、自己主張をする力を
中高生が養成するべき能力は、他者と折り合いを付ける力よりも、まずは「自己主張をする力」です。
「何で寮でゲームをしたらダメなの?」という疑問に対して学校側が「これは規則だからダメだ」と答えるようであれば、中高生は思考停止状態から抜け出すことができません。
学校側が「ゲームよりも読書感想文を書く習慣を身に付ける方が皆さんの論理的思考力が鍛えられるのでゲームは禁止します」と具体的な主張を行い、中高生が「皆で協力しなければクリアできないゲームを通じて協調性を磨きたいので週に一度だけはゲームをさせて下さい」という屁理屈を返せるくらいの自己主張能力こそ、次世代を担うリーダーに求められるのではないでしょうか。
学校が規則をコロコロと変えるわけにはいきませんが、生徒の状況により臨機応変に変えられる規則を設けることができれば、自己主張能力が養成され、議論を重ねるプロセスのを経て「他者と折り合いを付ける力」が身に付くのではないかと思います。
学校の多様化が教育を支える
「どのような人間を育てたいか?」というビジョンを具体的に語る学校が増えれば、学校に多様性が生まれ、教育の質は向上していくのではないかと思います。そして、ビジョンを実現するための「全寮制」であれば、ビジョンに共感した保護者が子どもに入学の選択肢として勧めるはずです。
「グローバル人材」や「協調性」など聞き心地の良いキーワードを並べているだけでは高偏差値の学校から順番に志願者が集まる現状は変わりません。これから生き残る学校は、社会的背景を的確に捉えて、育てたい人物像を語り、具体的な活動と実績を示し続けられる学校であるように思います。
クラウドファンディングとEコマースの境界線
クラウドファンディングでサクセスした「RAPIRO」の事例から、クラウドファンディングとEコマースの境界線について考えてみました。
「RAPIRO」とは?
「RAPIRO」とは、名刺サイズのコンピュータ「ラズベリーパイ」が導入された直径25cmの人型ロボット作成キットです。
警備ロボットとして設計したり、
天気予報士として設計したりできます。
挑戦者の石渡さん曰く、「RAPIRO」は最先端技術が盛り込まれていて売れ行きが予想できないためクラウドファンディングを利用したとのことです。はじめに米国クラウドファンディング・プラットフォームのKickstarter、次にサイバーエージェント・クラウドファンディングが運営する Makuakeで支援金の募集を行いました。
(※以下ではMakuakeを対象として話を進めていきます。)
目標金額が3,000,000円とMakuake の中では高額のプロジェクトでしたが、それを大きく上回る5,669,000円でサクセスしています。達成金額をここまで伸ばせた理由はどのような点にあるのでしょうか。
プロジェクト達成までの推移
達成までの推移を追うため、縦軸を達成金額、横軸をプロジェクト開始からの日数としてプロットしました。
このグラフから以下の2つの特徴が読み取れます。
1.ローンチから数日間で急激にサポーターが増えていること
まず、プロジェクトのローンチから数日間でかなりの支援が得られていたことがわかります。はじめにドンと伸び、その後ゆるやかに伸びる様子は、以前紹介した川島永嗣氏のプロジェクトと似た傾向にあります。
2.サクセス後もサポーターが増え続けていること
また、サクセス後にサポーターが増え続けたことも注目に値する点ではないかと思います。「RAPIRO」の場合、支援者はクラウドファンディングに参加するというよりは、アマゾンで新製品を購入する感覚で支援しているのではないかと考えられます。
クラウドファンディングとEコマースの境界線
クラウドファンディングは、購入型・寄付型・投資型の3種類に分類されますが、実際のところ、購入型と寄付型がミックスされたプロジェクトがほとんどであるように思います。このようなプロジェクトでは、サポーターに
(リターンの価値)+(挑戦者を応援することへの価値)=(支援金額)
という心理が働いているのではないでしょうか。「リターンがアマゾンで売られていても買わないけど、挑戦者を応援するためなら買うよ!」というイメージです。
一方、「RAPIRO」のようなプロジェクトでは、
(リターンの価値)=(支援金額)
というように、アマゾンで新製品を購入する感覚で支援しているのではないかと考えられます。具体的なデータこそありませんが、前者に比べると後者の方がサクセス後にもサポーターが増えやすいのは直感的に正しそうですよね。
クラウドファンディングとEコマースの境界線は、「挑戦者を応援することへの価値の度合い」にあると言えるでしょう。
「挑戦者を応援することへの価値」を高めるために
となると、クラウドファンディング事業者の仕事は「挑戦者を応援することへの価値」を最大限に高めることです。クラウドファンディング・プラットフォームの乱立が進み分野特化型に移行している傾向が伺えますが、現段階で最も大切なことは、プロジェクトの質を高め続けていくことであることは間違いなさそうです。
TOKYO CROWD FUNDING FORUM 2013
先日、国内クラウドファンディング事業者が集うイベント ”TOKYO CROWD FUNDING FORUM 2013” に参加してきました。当日の様子をダイジェスト版でまとめていきたいと思います。
詳細
- 日時:2013年10月8日(火)14:00~18:30(19:00より懇親会)
- 場所:ベルサール八重洲
- 参加費:一般 3000円(懇親会参加で5000円)CMT会員無料(懇親会参加で 2000円)
- タイムテーブル
時間 | 当日の流れ |
14:05 ~ 14:20 |
主催者挨拶
|
14:20 ~ 14:30 |
イントロダクション
|
14:30 ~ 15:00 |
基調講演「投資型クラウドファンディングの最新動向」 増島雅和 氏(森・濱田松本法律事務所) |
15:00 ~15:10 | 休憩 |
15:10 ~ 16:05 |
セッションⅠ:投資・融資型サービス
パネルディスカッション |
16:05 ~16:10 | 休憩 |
16:10 ~ 16:30 |
講演「コンテンツとクラウドファンディングを育てよう!」 北地達明 氏(有限責任監査法人トーマツ) |
16:30 ~ 17:10 |
セッションⅡ:購入・総合型サービス①
パネルディスカッション |
17:10 ~17:20 | 休憩 |
17:20 ~ 18:20 |
セッションⅡ:購入・総合型サービス②
パネルディスカッション |
18:20 ~ 18:40 |
事例紹介「投資型クラウドファンディングの最新動向」 渡邊大知 氏(株式会社JMC) |
18:40 ~ 18:50 |
総括
|
基調講演:「投資型クラウドファンディングの最新動向」(増島雅和 氏/森・濱田松本法律事務所)(14:30~15:00)
1.クラウドファンディングサービスの特徴
クラウドファンディングとは、アイディア実現のための資金をインターネットを通じて多数の支援者から収集する手法のことです。主な特徴として、以下の3つが挙げられます。
- 「インターネットベースのサービス」⇒仲介者自身によるオフライン勧誘は基本的に想定されていません。
- 「サービスの本質は1対多のマッチング」⇒ECサービスのひとつであると言えます。
- 「資金拠出者が一般人」⇒小口の拠出資金を許容しています。また、消費者保護を図らなければなりません。
2.貸付型と株式投資型のクラウドファンディング
最近運営者が増えてきた「購入型」や「寄付型」のクラウドファンディング以外にも、「貸付型」「株式投資型」のクラウドファンディングが行われています。
貸付型(=融資型)クラウドファンディング
貸付債権に対する投資型クラウドファンディングであり、クラウドファンディング・プラットフォーム(CFP)が貸金業者となります。
もともと「P2Pファンディング」「ソーシャルレンディング」と呼ばれていたものをまとめて「貸付型」クラウドファンディングと呼んでいるようです。(イケダハヤト氏の記事「貸付型クラウドファンディングとは:「日本クラウド証券」の大前さんに聞いてきた」も合わせてご一読ください)
株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングには、CFPが投資を媒介する「株式媒介型」とCFPがファンドを組成しファンドを通じて資金需要者に投資をする「ファンド型」の2種類があります。
現在金融庁では株式媒介型の実現を目指した議論が行われているそうです(ファンド型も認めてはどうかという意見もあるそうです)。すでにイギリスでは「Crowdcube」のような株式投資型CFPが利用されています。
3.株式投資型クラウドファンディングの制度設計
本年中に金融審議会から株式投資型クラウドファンディングの制度に関する報告書が出るようですので、来年の通常国会で法案が成立するのではないかと予想されます。主な論点は以下の通りです。
論点
3-1.取扱い金額の制限
- プロジェクトあたりの募集総額を1億円未満に制限⇒アメリカのJOBS法では100万米ドルに制限されています。
- 一人当たりの投資限度額を定額50万円に設定⇒リテラシーのある人は許容制限を緩和する可能性があるそうです。
- 詐欺防止のために All or Nothing 制度導入の検討
3-2.CFP運営者の金融商品取引法上の位置付け(=CFP運営者が取るべき資格)
現行法ではCFP運営会社が証券会社(第一種金融商品取引業者)となる必要がありますが、CFP運営会社を第一種金融商品取引業の「特例」と位置付け、
- 資本金制限を緩和する
- 契約締結前交付書面の記載事項の簡素化を図る
など、CFP運営会社に適切な規制を行うよう委ねる方向で議論が進められているようです。
3-3.株式発行者に関する情報
株式発行者は情報開示義務を課されませんが、CFP運営者に対しては、発行者に関する一定の情報をウェブサイト上で開示する義務を課す方向で議論が進められています。
3-4.運用にあたり留意すべき事項
- 株式の譲渡に対する制限
- 議決権の取り扱い
- エグジットに対する考え方(ひとりひとりにエグジットの件を伝えなければなりません)
4.ベンチャーファイナンスと株式投資型クラウドファンディング
株主媒介型クラウドファンディングは、株式が分散しているため株式譲渡によるM&Aエグジットが難しくなります。すると、続くラウンドでVC等から投資を受けられる可能性が低くなり、成長が制限される恐れがあります。
しかし、イギリスで行われているファンド型クラウドファンディングを採用すれば、このような心配は軽減されます。なぜなら、CFP運営会社が株式の処分権限や株主として会社や他の株主と契約を締結する権限を保有しているため、支援を受けた会社からすると、株主はCFP運営会社ということになるからです。
セッションⅠ:投資・融資型サービス
Ⅰー1.大前和徳 氏(日本クラウド証券株式会社)
【事業内容】
資金を有効活用したい個人と資金を調達したい個人・法人をつなげるため「クラウドバンク」を運営しています。まずは貸付型から事業を始めていき、将来的には株式投資型に取り組んでいきたいとのことです。
【事業背景】
2013年の世界のクラウドファンディング市場は5000億円と見込まれており、そのうち寄付型が28%、購入型が26%、貸付型が41%、株式型が3%であることから、現状では貸付型のニーズが大きいと考えられます。
【参考】
- 貸付型クラウドファンディングの世界最大手: "LendingClub" (Google が出資)
- 貸付型クラウドファンディングの先駆者: "ZOPA" ( Rothchild Group が出資)
Ⅰー2.杉山智行 氏(クラウドクレジット株式会社)
【事業内容】
世界中の中小事業・個人に融資できる貸付型CFPを構築中とのことです。(現在、第二種金融商品取引業登録事前審査手続中)
【事業背景】
以下の表のように、投資の活発さや資産の大きさは国により異なります。
投資先 | 資産 | 例 | |
調達ギャップ型 | 多い | 少ない | イギリス、オーストラリア |
運用ギャップ型 | 少ない | 多い | 日本 |
途上国型 | 少ない | 少ない | 途上国 |
資産が豊富な国が成長力はあるが原資のない国のサポートを行い、将来的に金銭的なリターンを受け取ることができるサービスを展開していきたいとのことです。
Ⅰー3.妹尾賢俊 氏(maneo株式会社)
日本初の貸付型CFPです。主に日本国内の中小企業(最近では年商1000億~2000億円の企業)に融資をしており、実績は
- 2013年9月のローン成約額:9億6000万円
- 2013年9月の分配額:4億5000万円
- 2013年10月7日時点のローン成約総額:109億1075万円
とのことです。maneoでは、
- 少額短期:500万円を3カ月だけ貸す案件
- 担保なし:納骨堂の販売権
- 業種業界:医療・介護・パチンコ関連
- 設立年数が短い会社:分譲住宅業者の建築資金
など、銀行では融資が難しい案件を取り扱っているそうです。
パネルディスカッション
―――『市場規模』について
大前「maneoの分配額が4億円という事実だけで市場の大きさを感じます」
―――『金融商品としての魅力』について
杉山「既存の投資信託と貸付型クラウドファンディングを比べると、後者はリスクの所在が明確であるためシンプルだと思います。リターンがわかりやすいという魅力があるのではないでしょうか」
妹尾「リターンが魅力だと思います。maneoの年利は5%~8%で、今のところデフォルトはありません。投資者層は30代~40代のサラリーマンが多く、平均投資額は120万円/人です。投資金額は正規分布ではなくて二項分布的であり、数万円投資している人が多数、数百万円投資している人が多数いるという状況です」
大前「30代~40代は先端的なサービスを使ってみたい欲望があるのではないでしょうか。株式投資型では主体的に投資先の会社に関わることができ、会社がどのように成長していくのかを見ることができる魅力があるのではないかと思います」
―――『参入障壁』について
杉山「金融商品取引法が複雑なため、参入障壁はどうしても高くなるのではないでしょうか。銀行出身の人たちが、maneo 2、maneo 3を作るようになれば面白くなるのではないかと思います」
妹尾「海外では maneo100 くらいまであります。日本で貸付型クラウドファンディングが活発でない理由としては、日本の金融庁が投資家保護に走るなど、各国の法律の違いが影響しているのではないかと思います。また、会計システムが当時なかったため、システムは1年半かけて作りました」
大前「システムはパッケージ化しても売れないので自前で作るしかありませんよね。システムが止まることは許されないのでかなりデリケートに扱っています」
―――『今後のビジョン』について
大前「5年で400億円くらい集めるために、ロードマップを引いて逆算して仕事を進めています。証券会社なので貸付型と株式投資型を軸にしながらも、あらゆるタイプのクラウドファンディングに対応できる仕組みを作っていきたいです」
杉山「5年後はラテンアメリカだけではなくアジアやヨーロッパにも展開していきたいです。10年後は世界中で5兆円くらいのお金を回したいと考えています」
増島「制度としてのインフラを整えて、起業家の人達を世に出していきたいです」
セッションⅡa:購入・総合型サービス① 【クライアントとの付き合い方編】(16:30~17:10)
Ⅱー1.岡田拓也 氏(アレックス株式会社)
COWNTDOWN の設立から1年が経ちました。これまでの実績は、
- 終了チャレンジ総数:15件
- サクセス数:11件
- チャレンジ成功率:73%
- 平均達成額:2,501,278円
- 最高達成金額:8,413,000円
とのことです。プロジェクト数は多くありませんが平均達成額が高額であり、ひとつひとつのプロジェクトを丁寧に進めている印象を受けました。
主な特徴は、
- ローカル&グローバル(英語対応)
- 助っ人企業、助っ人、兄弟(海外向けのEコマース事業)制度
- チャレンジャーの生声を届けるライブイベント
です。
個人的には、海外のプロジェクトをどのように進めていくかに注目しています。
Ⅱー2.岡本真 氏(オーマ株式会社)
社会性の高い活動が多く、これまでの最高達成金額は8,245,000円です。クラウドファンディングの普及のためには
- 「フェアな」評価基準の確立
- 「マーケット環境」の慎重な構築
が必要という話が印象的でした。
たとえば、「私たちのCFPの支援総額は3億円です!」というキャッチフレーズに任せてCFPの宣伝をした場合、失敗したプロジェクトはその金額に含まれているのでしょうか?そのようなことを明記しない限り、「フェアではない」ということになります。
また、資金の集まりが悪いプロジェクトをCFP運営者が無理矢理サクセスさせるというような行為をしているようであれば、サポーターからの信頼性やクラウドファンディングの面白味がなくなるため、マーケット環境は良くなりません。
業界としても知名度が低い現状では、個々のCFPを誠実に運営し、マーケット環境を向上させていくことが大切です。
Ⅱー3.平皓瑛 氏(グーパ株式会社)
アニメーション産業がデジタル化への対応に遅れていたり、企画実行のための資金が不足していたりする状況に歯止めをかけるため、アニメーション特化型のCFPを立ち上げました。
日本だけではなく世界へ向けたサービスで、ユーザーの4割は外国人です。アニピコで生まれた作品を海外で直接販売できる仕組みを作り、アニメーション業界のインフラを構築していきたいとのことです。
Ⅱー4.斉藤隆太 氏(株式会社サーチフィールド)
出身地と出身者をつなげ、自分の地元と深く関われる世の中にすることを目的としたCFPです。助成金や協賛金で地域を活性化していた人たちに利用してもらいたいとのことで、各県ごとに専用のプラットフォームがあります。
地元で新しいコミュニティが創造されることが魅力的ではないかと思います。
Ⅱー5.松崎良太 氏(きびだんご株式会社)
全人類桃太郎化プロジェクトというキャッチフレーズを掲げた「kibidango」では、プロジェクトやチームづくりのお手伝い、クリエイターやデザイナー、マーケッター等を対象としたセミナーを「提供する価値」としています。
プロジェクトの条件としては、
- 寄付型はお断り
- その道の「プロ」であること
ということだけで、あとは「やる気」があればジャンルを問わずに応援したいとのことです。
その道のプロであることはクラウドファンディングを成功させるために重要な条件なのではないかと思います。将来的には「クラウドファンディング型ECサービス」を作るとのことなので、こちらも楽しみです。
パネルディスカッション(テーマ:クライアントとの関係構築)
ーーーポイント1.審査(プロジェクトを選ぶポイントは?)
岡田「世界に挑戦するプロジェクトであるかどうかです。どれだけプロジェクトにコミットできるか。助っ人が目利きとして登場する場合もあります」
岡本「その人に自分がお金を貸せるかどうかです。社会関係資本に富んでいる人の方が有利ではないかと思います」
平「報酬をきちんと出せるか、どのようなファンがついているのかを審査しています」
斉藤「本当に地域のためになるのか、また、どれくらい広報をしてくれるのかが重要だと考えています」
松崎「売れるかわからないけどやる気があるならやってもらおうよという精神です。自分たちの好きな案件ばかり選ばないようにしています。諦めない理由を持っているかどうか。やりきるスキルを持っているかが大切ではないでしょうか」
ーーーポイント2.支援(どのようなサポートを行うべきか?しているのか?)
斉藤「現段階ではサポートをしないという選択肢はあり得ません。サポートの分散に力を入れています」
平「成功者が増えてくるまでは、サポートするしかありません。過去にキックスターターで成功した人にプロジェクトの依頼するなどの工夫をしています」
岡本「基本的にひととおりのサポートを行いますが、実行者が最後まで喰らい付く気があるかどうかが大切です」
松崎「サポートは力を入れています。将来的には挑戦者がプロジェクトを上手く売り込める仕組みを作りたいです。どういうことをやればお客さんがワクワクするかを考える点では、ECと共通していますね」
岡田「現段階では申し込まれたプロジェクトをそのまま出すのは難しいです。丁寧にプロジェクトを作り、伴走していくことが大切」
---「どういう人がクラウドファンディング事業者に向いているのでしょうか?」
岡本「クラウドファンディングを仕事にするためには、それが大好きではなければなりません。レディーフォーの米良さんは学部時代からクラウドファンディングがやりたくて、社内の反対を押し切り始めました。また、文章作成能力も重要です。プロジェクトサービスページを作るときにきちんとした文章を書けなければなりません」
松崎「やる気があれば大丈夫です。世の中には「やりたい人」と「なりたい人」がいますが、前者であれば達成できる可能性は大きいです。クラウドファンディングはネットサービスではありますが、人と人をつなげる性質を持つため、プロジェクトを考えるときにはリアルでお話をするよう心がけています」
セッションⅡb:購入・総合型サービス② 【カスタマーとの付き合い方編】(17:10~18:25)
Ⅱー6.中山亮太郎 氏(株式会社サイバーエージェント)
2013年8月にローンチしたMakuakeの特徴は、
- ameba会員が3000万人/月であること
- 年間800億円売り上げているメディアとの接点があること
です。今後はスマホの活用などでユーザーが訪問する仕掛けを作り、音楽、映画、スポーツ分野を中心に取り組んでいくとのことです。
Ⅱー7.梶川拓也 氏(株式会社JGマーケティング)
ShootingStar の優位性は、
- 集客:提携媒体による集客力
- 製作:画像、動画、文章表現などのノウハウ
- 信頼:金融サービスとしての使いやすくてトラブルのない小口決済機能
とのことです。
購入型に直接応用できるかはわかりませんが、個人的には寄付型CFPである Justgiving で培われたノウハウを活かせるところも強みなのではないかと思います。
Ⅱー8.大高武志 氏(株式会社MotionGallery)
クリエイティブ分野に特化したCFPです。クリエイティブ分野にお金が足りていない現状を解決するため始めたとのことです。クラウドファンディング古参であり、これまでに総額1億円以上の達成をしています。
Ⅱー9.沼田健彦 氏(株式会社ワンモア)
株式会社ワンモアでは、GREENGIRLの運営だけではなく企業にCFPを提供する事業を行っています。各CFPに登録した会員にメーリングリストを配信し、PRのサポートしているとのことです。現在の会員数は6000人で、映画「神様はバリにいる」映画製作プロジェクトでは国内最高額の1688万円を達成しています。
将来的にはクラウドファンディング業界の楽天を目指しているとのことです。起案に興味のあるクリエイターと各クラウドファンディングサイトのマッチングにより、企業に眠る魅力的なコンテンツを掘り出していくことを目指していきたいとのことです。
パネルディスカッション
ーーー『支援者に刺さるプロジェクト』について
中山「現在実行しているRAPIROのプロジェクトでは子どもを持つエンジニアのお父さんをターゲットとしたのですが、そこが上手く刺さったのではないかと思います。また、サッカー選手のようにすでにファンがいる案件は強いのではないでしょうか」
大高「クリエイティブの本質をきちんと伝えることが大事だと感じています。有名人が出ています、困っていますではダメで、熱量(=コミュニケーションの量)を増やしていくことが重要だと思います」
ーーー『支援者獲得のアプローチ』について
中山「クラウドファンディングがどのようなサービスかが広く知られていません。そこで、アメーバブログやスマホ特化型のコミュニティを活用して、認知度を高めていきたいと思います」
沼田「暖簾力が大切だと思います。伊勢丹のように知名度のある団体が参入してくれるとありがたいです」
ーーー『業界全体としてのプロモーション』について
沼田「みんなで何かやる!というものがほしいので、クラウドファンディング準備室を始めました。みんなで集まるところから始めていきましょう」
中山「新しいビジネスにおいては、横の連携を強めていくことが重要だと思います」
総括
「過去のモノはネットオークションで、現在のモノはEコマースで、そして未来のモノはクラウドファンディングで購入する時代である」という言葉で会が締めくくられました。
今後の業界全体の発展に注目していきたいと思います。
おまけ
Makuakeでプロジェクト進行中の「ラピロ(RAPIRO)」の製作に関わっている方にお願いして、実物の写真を撮らせていただきました。
RAPIROは機楽株式会社、株式会社ミヨシ、スイッチサイエンス、株式会社JMCの各社の得意分野を活かしてナント5か月で製造したそうです・・・!
Facebook ログインの仕組み
Facebook ログインとは?
WEB サービスを利用する際、氏名やメールアドレスを毎回入力するのはなかなか手間がかかるものですが、「 Facebook ログイン」がこの問題を解決しました。
たとえば、Kickstarter の「新規登録」をポチると以下の画面に移動します。
ひと昔前までは画面左側のように氏名と連絡先(時には好きな食べ物や趣味など)を入力させられていたのですが、現在では、画面右側にある Facebook ログインボタンひとつで新規登録できるようになりました。
※「Facebook ログイン」ではなく「 Facebook のOAuth 認証」と呼んだ方が正確です。OAuth 認証に関してはこちらの記事にわかりやすくまとめられています。
Facebook ログインの仕組み
さて、ログインボタンを押すと最近よく見かける「 Facebook でログイン」画面が登場します。
この画面いわく、Facebook の登録情報のうち、公開プロフィール、友達リスト、メールアドレス、出身地、居住地、いいね!が Kickstarter に送られるとのことですが、これだけではどのように情報をやりとりしているのかはいまいちわかりません。Kickstarter を例に少し掘り下げてみたいと思います。
先に結論をまとめると、以下のようになります。
詳細は以下の通りです。
- ユーザーがログインボタンを押します。
- Kickstarter が Facebook に
- Kickstarter が Facebook Developer で取得した ID
- リダイレクトさせる URL
- セッション(=セキュリティを確保するための任意の文字列)
- ユーザーから得たい情報
を送ります。
- Facebook がユーザーにログイン画面を提示します。
- ユーザーは「 Facebook ログイン画面」で OK ボタンを押します。
- Facebook は Kickstarter に許可コードを返します。ここで、セキュリティ対策のため、②で Facebook に送信したセッション値と Facebook から返されたセッション値が同じであることを確認します(参考:CSRF対策)。
- Kickstarter は
- Kickstarter が Facebook Developer で取得した ID と暗証番号
- リダイレクトさせる URL
- 許可コード
を Facebook に送ります。
- Facebook は Kickstarter にアクセストークンを返します。
- Kickstarter は Facebook にユーザー情報(氏名、画像、友達リストなど)を要求します。
- Facebook は Kickstarter にユーザー情報を返します。Kickstarter はユーザー情報をデータベースに登録して、以下のようなログイン状態となります。
おわりに
Facebook のログイン認証についてザックリまとめてみました。細部を知らなくても使える便利なサービスが増えてきた昨今ではありますが、ブラックボックスで利用している物ほど根本的な原理の理解を目指す精神を忘れずにいたいものです。
参考資料
- facebook developers「The Login Flow for Web (without JavaScript SDK) 」
- ドットインストール「Facebook でログインするWebサービスを作ろう」
Kickstarter vs Kickstarted
Kickstarter ならぬ "Kickstarted"
Kickstarted という某クラウドファンディングプラットフォームを連想させるサイトを発見しました。
このイントロ動画は
- アイデアを持つデザイナーが Kickstarter で資金調達に成功したものの
- 完成品をどこで売れば良いかがわからないので
- マーケットプレース "Kickstarted" を作ることになりました
という流れで構成されています。クラウドファンディングで人気が出た商品を定期的に販売できる仕組みを作りたいとのことですが、まだ商品数はほとんどありません(しかもやたら高額…!)。「ニッチな商品を取り扱うEコマースサイト」という印象です。
iKickstarted でクラウドファンディング実施中
イントロ動画には含まれていませんでしたが、いろいろと調べた結果
- アイデアを持つデザイナーが Kickstarter で資金調達に成功したものの
- 完成品をどこで売れば良いかがわからないので
- マーケットプレース "Kickstarted" を作ることになりましたが資金が足りません。
- そこで、Kickstarted の開発資金を iKickstarted で募集します!
という流れがあることがわかりました。ここで自前のクラウドファンディングを用意するあたりがアメリカンスタイルですね。本家 Kickstarter はあまり良い心地ではないらしく、顧問弁護士の方々は Kickstarted の運営者に抗議をしているそうです。(参考資料:What Is The Next Crowdfunding Evolution?)
Kickstarted は成功するのか?
名前の一部をパクるパクらないの話は置いておきますが、Kickstarted が取り組もうとしているクラウドファンディングでサクセスした製品をひとつのサイトに集約して定期的に販売する仕組みは面白いのではないかと思います。現段階ではうまく機能するかはかなりビミョーなところですが、今後の動向に期待ですね。